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舞台保存会だより127 お囃子指導者10年表彰

お囃子指導者10年表彰

5月28日、松本深志舞台保存会の「令和元年度総会」が開催されました。25回目の定期総会ということになります。

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(総会風景)

総会名や年度名を「平成31年度」とするか「令和元年度」とするかで少々悩みました。年度としては平成で始まっていますから(四月始まり)、平成31年度と称するのが正式なように思います。しかし既に元号が令和であれば新しい元号の年度名を謳いたい。ほかの組織もだいたい令和を用いるところが多いようです。どちらが正しいのか分かりませんが、保存会も新年度を令和元年度とすることにしました。

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(議長を務める石塚会長) (新年度事業計画の上程)

今年の総会は例年の如く過年度の事業報告と新年度の事業計画が審議され、まったく異議無く承認されました。重要な案件としては『舞台庫改修検討委員会』の設置が承認されたこと。予算も付いて舞台庫の改修・改築問題がいよいよ具体的な検討課題となりました。

特別会計も「舞台修理調査目的基金会計」から「舞台庫修理目的基金会計」と名称を変えました。「舞台庫」がこれから保存会の中心課題となります。

お金もかかり、全体のコンセンサスを得なければ進まない難しい問題ですが、なんとか知恵を絞り工夫を凝らして具体的な形となるよう努めてゆきたいと思っています。

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(総会終了後 懇親会風景)

さて、今年の総会では終了後に『祭囃子伝承スクール』関係者の勤続表彰式が行われました。スクールの講師・指導者の皆さんに対する十ヵ年勤続表彰、感謝状の贈呈式です。笛師3人、太鼓指導者7人が対象者となりました。

『松本の祭囃子伝承スクール』は平成20年から始まりました。松本の祭囃子を組織的に伝承し、舞台行事として伝えてゆくためです。(舞台保存会だより77

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(祭囃子伝承スクール平成20年発足式の様子 子供が80人も集まってしまいました)

子供たちが舞台に乗って笛に合わせて太鼓を叩く松本のお囃子は、町会ごとに練習・伝承が行われてきましたが、近年の少子化・人口ドーナツ化のため伝えるべき子供がいなくなり、多くの町で途絶えてしまいました。単独の町会では伝承が難しくなったのです。

そこで舞台保存会が主体となり16町会はもとより、これまで舞台に乗れなかった他町会の子供にも声をかけ、お囃子道場として始まったのが『松本の祭囃子伝承スクール』です。平成20年春にお囃子指導者会を結成し、子供たちを募集してスクールが始まりました。

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(スクールで笛を吹く笛師の皆さん)

笛師さんは町のお囃子が昔から頼んでいる山辺の方にお願いしました。

嘗て天神まつりが近づくと、山辺の笛師がそれぞれ依頼された町にやって来て、町の子供に囃子を教えていました。笛師は里山辺9町会の囃子組の人たちです。春の須々木水神社お船まつりが本番で、春さきに大いに練習し、お船で奉納します。祭が終わると農作業の日々。やがて農閑期の夏になると天神まつりを控えた松本の町に下り、囃子を教えました。

笛師たちは着流し姿で腰に篠笛一本を差し、宵方に三々五々松本の町にやってきました。それぞれが所定の町で笛を吹いて子供たちに太鼓を叩かせ、終わると数人ずつ笛を吹きながら薄川沿の夜道を上っていったといいます。

笛師の長老格・赤羽陸良先生も、若いころ先輩に従いて町に下り、笛を吹いたそうです。

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(感謝状の贈呈 笛師の赤羽陸良さんと上地堆凱さん)
(宮田貴史さんは所用のため欠席でした)

太鼓の指導者は舞台町内から有志の方にお願いしました。それぞれ町のベテランで、太鼓の好きな人たちです。

ところがここに一つ難しい問題がありました。というのは、舞台町会16ヶ町のお囃子は6曲で基本は一緒なのですが、それまでずっと町ごとで伝えられてきたため、町により少しずつニュアンスが違うのです。16通りとまでは云わないが、少なくとも中町流、本町流、伊勢町流ぐらいの系統があり、その中で町ごとに細かな違いがある。

「うちはここで三つ叩くけど、そっちは二つかい?…いやぁ難しいな。」

しかし「スクール」として組織的に教室を開催する以上、そこは統一しなくてはならない。伝承スクール開催にあたっては指導者の皆さんが何度も打ち合わせをし、一つの形にまとめて指導を行ないました。あれは大変だったと思います。

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(スクール開始に先立ち行われたお囃子指導者会の練習風景)

その時集まってくださった皆さんが、今回の表彰者です。

笛師の、赤羽陸良さん・上地堆凱さん(下金井)、宮田貴史さん(荒町)

太鼓指導者、福井義昌さん・小田多井昭夫さん(伊勢町)、鹿川一夫さん(中町)、岩原正勲さん・瀧口孝一さん(本町)、大野幸司さん・花岡秀好さん(飯田町)

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(感謝状の贈呈 福井義昌さん 鹿川一夫さん)

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(感謝状の贈呈 瀧口孝一さん 岩原正勲さん)

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(感謝状贈呈 大野幸司さん 花岡秀好さん)
(小田多井昭夫さんはご欠席でした)

3人の笛師さん、7人の太鼓指導者の皆さんにはスクールの発足より多大なご苦労をいただきました。10年間、休むことなく倦まず弛まず、本当にありがとうございます。

そして、どうかこれからも松本の祭囃子をよろしくお願いします。皆さんこそ本当の意味で文化の伝承者なのです。

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(平成20年 まつもと市民芸術館にて お囃子DVD制作の様子)

ところで、10年といえばこの『舞台保存会だより』も昨年で10年を迎えました。たしか平成20年の9月に初回を掲載していますので満10年。昨年の9月に第120回をアップすることができました。月に一回のペースで年12回、十年でちょうど120回となります。始めた頃はせいぜい2、30回程かと案じていたのですが、我ながらよく続いたものと思います。

この『たより』は、個人で始めたいと思って始めたものではありませんでした。11年前の当時、深志神社は遅まきながらホームページというものを開設しIT世界で情報発信をすることになりました。就いてはHPの来訪者を増やすため新着情報の中に何か記事を書いてほしいとIT担当の清住神職から頼まれ、ならば舞台保存会の活動を紹介しようか、と始めたのがこのブログです。「舞台保存会だより」は、まったくその名のとおりでした。

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(舞台改修竣工式の風景)

当時、舞台保存会は平成の舞台修復事業の真っただ中で、毎年2台ずつ舞台の修復が行われていました。それに伴い修理審査委員会や舞台の解体・竣工もあり、記事には困らないと思われました。

しかしそれは毎月あるわけではなく、ニュースのある月は限られます。そこで何もないときは他所の舞台・山車の紹介や、舞台彫刻の解説などして回をつなぎました。

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(山車まつり風景)

また後半になると舞台の修復はほぼ終わりましたので、深志舞台の由緒や謎について、ブログを綴りながら考えてゆきました。例えば明治に入って多くの大型舞台が売却され,代わって簡易型舞台が登場する問題。明治後半から昭和にかけての舞台の特徴とその見方など。それはとても興味深い問題です。(まあ、私にとってですが…)

また、それはただ単に舞台だけのことではなく、近代日本の様々な問題が投影されているように思われました。

しかしこのテーマも、前回でほぼ辿り終えたように感じています。(舞台保存会だより126

さて、これからどうしましょうか…。

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近いうちにこの深志神社HPは二度目のリニューアルを行なうそうです。とりあえずそれまでは、もう暫くこの「たより」を続けてみたいと思っています。