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舞台保存会だより16 舞台サミットの開催・『伊勢町二丁目』舞台の完成

舞台サミットの開催・『伊勢町二丁目』舞台の完成

(掲載の写真はクリックすると拡大します)
去る5月21日、まつもと市民芸術館にて「響け!松本の祭囃子」と題して第5回の松本市舞台サミットが開催されました。タイトルのとおり今回は松本の町に伝わる祭囃子をテーマといたしました。舞台保存会会員を始め、約100名の参加者を芸術館小ホールに迎え盛大に開催することができました。

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(第5回松本市舞台サミット DVDにも出演した指導者によるお囃子の実演より始まる)

さて、今回のサミットですが、舞台保存会が一昨年より取り組んできたお囃子再生事業の一つの決算で、祭り囃子の学習用DVD『松本の祭囃子』と、お囃子の五線譜による楽譜、この二つの教材の完成披露を兼ねました。

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(お披露目のDVD『松本の祭囃子』。他CDと解説・楽譜が付いて特別頒布価格 3,000円)
(現在売り切れ、増刷中。今月半ばから氏子町内書店、古書店でも扱います)

今回の舞台サミットでは、このDVDの披露とともに、松本の祭囃子について関係者によるお囃子の実演・パネルディスカッションを行いました。出演は深志舞台のお囃子指導者、里山辺のお囃子伝承者(笛師)、そして今回お囃子を譜面にしていただいた音楽家の丸山嘉夫先生に松本の祭囃子について解説をお願いしましたが、先生からは松本の祭囃子の音楽的構造について非常に興味深いお話が聞けました。

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(パネルディスカッション風景、向って左手前が丸山先生)

丸山先生によると今回採譜した6曲の囃子は音階的な特徴から三つの種類に分けられ、その特長は伝統的日本音階であるの重層化した構造にあるということです。日本の伝統音階は『律音階』『民謡音階』『都節音階』『琉球音階』の4種類があるそうですが、このうち今回の6曲は民謡音階と都節音階の積み重なったような複合音階になっているのだそうで、その複合の仕方から三つのグループに分けられるということです。その区分は
1、〔かぞえうた〕〔ちゃんちゃんりつ〕〔ばかばやし〕
2、〔きりばやし〕〔しゃがしゃりこ〕
3、〔はなぐるま〕
なかでも丸山先生は〔はなぐるま〕の特殊性に注目していました。

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(説明をする丸山先生 先生採譜の楽譜〔はなぐるま〕ベートーベンと違って丁寧でとてもきれい)

〔はなぐるま〕は全体に〔かぞえうた〕〔ちゃんちゃんりつ〕と似た構造の曲ですが、中に一種独特の哀調のある節回しがあり、それがなんだか沖縄民謡のようなエクセントリックな印象で私は大好きな曲なのですが、琉球音階とは関係がないのだそうです。
丸山先生もその部分を特殊と感じたそうで、初めて聞いたとき突如西洋音階が現れたと感じ、笛師の間違いではないか、或いは西洋音楽の影響を受けたお囃子なのかと疑ったとか。しかしそこはプロの音楽家。曲を譜面にし、伝統的日本音階の複合構造として考察すると、特殊な音調は合理的に説明できるのだそうで、丸山先生は民謡やお囃子の研究家ではありませんが、この曲の研究に携わったことは自身にとっても有意義だったようです。
音楽大学での研究発表のような難しい話でしたが、先生は少しでも感覚で捉えられるようキーボードで音を出して説明してくださり、われわれ聴衆も昔からある身近なお囃子が実はきちんとした音楽理論に裏打ちされているということを知り、なんだかよくは解らないけど、なんとなく納得・満足したパネルディスカッションでした。

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(DVDのステージ発表)

先生の話されたことは、今回の楽譜付解説書では特に触れられてはいません。しかし何れ現在進行中の土本研究室による舞台調査がまとまるときには、松本の舞台研究お囃子編として研究論文をお願いしたいと思っております。
サミットは他にも深志舞台保存会のお囃子指導者や、里山辺下金井地区の皆さんによる実演、さらに薄水神社の宮本・薄町の青年による太鼓の実演があり、お囃子関係者には面白い催しとなりました。中でも薄町の太鼓では吹かれる笛は同じでも太鼓の打ち方はまったく別で、参加者全員が呆気にとられて聞いていたのは思わず笑いたくなるほどでした。
聞き終えてコーディネーター早田氏の質問『ええと、〔はなぐるま〕を演奏していただいたんですよね…?』
細かな打ち方とかの違いではなく、曲を構成する笛と太鼓の関係自体がまったく異なるのです。何れこの辺も丸山先生の研究材料としてもらえば面白いなと思った次第です。

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(お囃子を披露する下金井地区の元青年たち 昔取った杵柄は衰えていません)

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(薄町の青年?による演奏。実は二人は兄弟でともに神主さんなのです)

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(終了後の懇親会風景 「宮司さんお疲れさま」「いやー赤羽先生こそ」)

さて、サミットから10日後の5月31日、伊勢町二丁目舞台の竣工・入魂式が行われました。しかし、当日は朝からの雨。神前で入魂清祓いの後、地元伊勢町に曳いていってお披露目の予定でしたが、最初から濡らすのは…、ということで入魂神事も舞台庫の中で行いました。残念ですが仕方ありません。お披露目はやはり天神まつりで、ということになります。あと一月半ほどですが、お祭りを楽しみに待ちたいと思います。

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(4月19日引渡し時の写真 因縁の狛犬を尻目に舞台収納)